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モロッコトリップ 2025【Vol.4】シディ・カウキ~タガズート

シディ・カウキを19時に出発して1時間くらい走ったところにSmimouという町に出た。

町といっても幹線道路に沿って約500mくらい商店が立ち並ぶだけである。

昼に見るとそこから町が広がっているのが確認できるのかもしれないが、限られた灯りだけでは町の規模を測ることができそうにない。ここには街路灯というのはなく、お店の灯りと車のヘッドライトが唯一の照明となる。

海から上がって何も食べずに車を走らせてきたので、僕たちは空腹を感じ始めたところだった。

とりあえずここでなにか食べようという事になり、適当に路上に車を停め散策してみることにした。

話しは変わるが、僕自身今回が2回目のモロッコとなる。

散策しながら2018年に来た時の記憶が甦ってきた。

その時はマラケシュからサハラ砂漠の入口の町メルズーガという町に夜行バスで向かったのだが、同じような場所で休憩した。

その時は勝手も分からず何を買って食べればよいか分からなかったので、ひとまず果物を売っているお店でオレンジを一袋買って窓側の席に戻ったのだが、僕が席に座ったと同時にジェラバを着た知らない人がバスに乗り込んできて、いきなり僕の隣の通路席に座りだした。

隣の席は空席のはずだったのだが、もしかしたらこの休憩所から乗ってくる乗客かもしれず、少々不気味さを感じながらも様子を見ることにした。

その人は年齢不詳だが明らかに僕よりは年上というのは分かる。動向を注視しながら横目で確認してみると、急に僕に手を差し出してきた。

彼はずっと僕の目を見てて、手を差し出したまま微動だにしない。

乗客ではなく直感的に金銭を恵んでほしいというのは分かったが、もしかしたらこのオレンジが欲しい可能性だってある。

ただ金銭の場合、他の乗客がいるとはいえ強引な方法で金を盗んでいく可能性もある。

僕はそれに備え少し身構えとりあえず相手の出方を見るために先程購入したオレンジを1個渡してみる。

彼は微動だにせず、オレンジを右手に持ち替えてまた手を出してくる。

僕はもう1個オレンジを彼に渡す。

彼は先程と同じようにオレンジを右手に持ち替えてまた手を出してくる。

どうやらオレンジが欲しいのではない事だけは理解できた。

ここで僕がお金を渡してしまうと、これからここで休憩するバスの乗客に同様に手を差し伸べて金を得ることを覚えてしまうだろう。いきなり隣に座られるというのは不気味である。

しかも10分くらい手を差し伸べてきておりずっと黙ったまま僕を見つめている。

他の旅行者に同じ思いをさせない為にも金を渡してはいけないと思い、どうしたものかと考えていると、ちょうどバスの運転手がやってきて彼を追い払ってくれた。

そのような出来事があった事をユキオに伝え、このような休憩所では注意が必要だとお互いに言い聞かせながら食べ物を探していると、バーベキューの良い匂いが漂ってきた。

その匂いに釣られて来てみると肉を焼いたものをパンで挟み、サンドのような物をテイクアウト販売していた。

店に入って食べるには少々時間がないので、このサンドであれば車の中で食べながら次の目的地のタガズートに向かえる。地元民の行列ができてるし人気店のようである。

僕たちはこの店でサンドを購入する事にした。

モロッコでは肉屋の前に大抵、このようなBBQで肉を焼く人がいる。つまりこの店の後ろにある肉屋で好きな肉を購入して焼いてもらうスタイルなのである。とはいえ注文の仕方もよく分からないので、肉を焼いているお兄ちゃんに、これと同じ物をくださいとジェスチャーで伝えると、後ろにある肉屋に注文をしてくれた。 僕たちがお願いしたのブロック肉のような物だったが、肉屋から出てきたのはミンチ肉だった。肉屋は大盛況な様子で次から次へと客がやってくる。

ミンチ肉を注文している客もいて、どうやらミンチ肉は玉ねぎとスパイスをこねて、ハンバーグのようにして焼いてくれるようだった。

注文多数のようで僕達のサンドは少し時間がかかるらしく待っている間、ずっと焼いている様子を見てた。

よくよく見ると路上には野良犬がたくさん集まっている。

「野良犬の肉ではない事を願おう」なんてユキオと冗談を言い合う。

BBQの良い匂いに気を取られてあまり気にしなかったが、調理の様子を見てると、生肉を触った手でそのままパンを触り、野菜をカットして包丁もそのままである。

たまにまな板を拭くのだが、雑巾のような布切れを使っている。

そうここはモロッコである。衛生管理なんてあってないようなもの、、。

「お腹壊したらどうしよう。」

そう頭で考えてしまうと、全てが恐怖に囚われ負の考えがループしてしまうのである。

「よく見ると生肉触った手でそのままパンを触ったり、野菜も、、大丈夫かな?」

ユキオに伝えてみると

「確かにやばそうだね笑。でも俺は全然食べるよ!だってうまそうじゃん。大丈夫でしょ。」

何を根拠に大丈夫なのかは分からないが、かなりリスクがある。

そんな会話をしていると、僕たちが注文したサンドが出来上がった。

それを受け取り車に戻り、食べるのを躊躇してると隣のゆきおが

「うまい!!」と大きな声でうなり声をあげていた。

見ると早速食べている。

せっかくサーフィンで気持ちがひとつになったのに、ユキオだけ食べて俺も食べないのではダメだ。

お腹壊したらその時に考えよう。

恐る恐る口にしてみると、、めちゃくちゃ美味しかった笑

一瞬でサンドを平らげ、僕たちはタガズートに向けて夜の荒野を進んでいく。

車を走らせる事、約1時間。

お腹も何事もなさそうで少し安心した頃、遠くに小さい光の塊が見えてきた。

あれがタガズートの町だろうか、?

ナビが示すタガズートの町はその光の場所より少し手前だった。 どうやら僕たちが見たその大きな光の塊はアガディールという大きな街だった。 つまりもう既に僕たちはタガズートには到着しているようだった。

ナビの案内に沿って細い路地を入っていく。

電灯の灯りもなく、舗装されていない道路に出た。

本日からお世話になる宿のホストが路上で立って待っていてくれていた。

車を指定の場所に停める。

車を降りると一気に家畜の糞尿の匂いが漂い、野良犬が我が物顔で闊歩する何ともカオス感のある場所だった。

車から荷物を出して3階の部屋に入る。

4階建ての建物の2階に住むホストはムハンマドさんといい、ベルベル人だった。

とても感じよく僕達を迎えてくれ温かいミントティーを淹れてくれた。

冷えた身体にはこのミントティーが何よりも美味しい。

僕たちは荷ほどきもせずシャワーも浴びずにベッドに潜りこみ深い眠りについた。

翌朝、6時半に起床し屋上にあるテラスに上がり昨夜いただいたお茶を温めなおしてこれからの予定を組む。 昨夜到着した時は真っ暗で町の様子が分からなかったが、明るい光で見るタガズートの町は想像していたのとは少し違った。

町というか規模でいうと村という表現が適格だろう。

こじんまりとした懐かしい雰囲気さえ感じる。

屋上のテラスからはビーチが一望できる。

タガズートの建物はほとんどがブロックで積み上げた建築である。

耐震基準や建築基準法なんてものは存在しないかのようにどの建物もブロックを積み上げている。

その為、建物の高さは4階が限度なのだろう。それが逆に統一感を生み出して均一化されていてる為に、誰もが平等に空を見渡せるしテラスからは海が一望できるのだ。

意識的なのか無意識なのかは分からないが、なんとなく町全体からも優しさを感じれるのだ。

とても居心地が良い。

話は変わるが、この旅の前に動画撮影をして記録することも考えたのだが、撮影機材の準備等の事もあり、インスタライブを配信しようかという事で、たまに配信をしていたのだが、

配信時にはどうもユキオとの会話がギクシャクする事があった。

単なるカメラの前で話すことになれていないだけだろうと思っていたが別の理由があった。それについては後述するが、

屋上テラスで決まった予定はこうだ。

午前中にサーフィンをして午後から観光をかねてアルガンオイルの工場を見学に行く。

夕方もう一度サーフィンをして夜はゆっくり過ごす。

予定も決まったことで散歩も兼ねて朝食を食べに行くことにした。

高台にある僕たちの宿を200mくらい降りると海に出るが、海から坂道を見上げると羊飼いが羊を散歩させていた。

すぐ目の前にある、パノラマビーチという場所で波をチェックする 上から見る限りは良い感じの波に見える。 体調もすっかりよくなっていた。 昨日のサーフィンが功を奏したのかもしれない。 荒治療というやつだろうか。

この町はパノラマビーチというビーチをメインに町が栄えているようで、

ビーチの目の前を走る幹線道路に沿って直線距離で500mくらいにロードサイド店があり、そこにレストランやサーフショップ、お土産物店がひしめき合う。 ビーチの目の前にはモスクがあり、一番端、つまり町の果てにはゴミ焼却場らしきものがある。 そしてすぐに坂道が続いており、坂道沿いに住民が住んでいるようである。 反対側の海側に降っていく先には古い町並みが続いていて少し迷路のような作りになっていた。 とっても面白そうな町である

ちょうど羊飼いが散歩している近くで地元民で賑わってるお店を発見した。

朝食はオリーブが入ったオムレツのような物に、パンとチーズ、ハチミツがついてきて日本円で約1,000円くらいだった。 エッサウィラでセルフィーナに教えてもらったアーモンドバターが付いていた。 コーヒーは基本濃いめのエスプレッソなのでミルクを入れてもらう。

朝食を食べ終えてサーフショップに向かう。

パノラマビーチに一番近いところでレンタウボードを借りる。

ウェットスーツ込みで1日70DH(日本円で1400円程度)だった。

ただウェットスーツはここでも2mmと薄いものしかなかったので、水温だけが気がかりだった。

そのままの勢いでサーフィンしたものの、波が思った以上に大きいのと、薄いウェットで水温に耐えきれず1時間程度サーフィンをしたところで宿に戻る事にした。

昨日の持ち帰ったパエリアが残っていたので、フライパンで温めて食べる。

ここには電子レンジという近代文明はない。

午後からは予定通りアルガンミュージアムへ行くことにしたのだが、今日は工場は休みで製造過程も見れないらしい。 ちなみに料理教室もやっているようだ。 料金は食事込みで1万円程度だった。

アルガンオイル工場の帰り道に、世界的に有名なサーフポイントであるアンカーポイントを見に行く事にした。頭オーバーの波がマシンのようにどんどん押し寄せてくる。

ハイレベルのサーファーが綺麗に波を乗りこなす。

この波に挑戦したいのだが、薄いウェットでは厳しいかもしれない。ここでチャレンジするにはウェットスーツを探して考える事にした。

宿に帰りユキオがもう一度 サーフィンをしたいというので、僕はカメラマンに徹した。

薄いウェットでは夕方の冷え込みには対応できないだろう。

海から上がり夕飯を食べに行く事にした。

朝食を食べたレストランも開いていたのだが、僕たちは別のレストランに向かった。

レストランの向かいに停まっていた古い車が目に入った。

モロッコはフランスの植民地だった歴史があるため、フランスの古い車がたくさん走っている。 日本は古い車を大切にすればするほど税金という名前の罰金を支払わされる事になるが、ここではまさに旧車天国。

物がないという事もあるだろうが、古い物を大切に使っているのをみるとなんだあ嬉しくなる。

夕食は米が食べたいという僕の希望に沿って洋食風のレストランに入った。

ユキオは魚のグリル、僕はエビを注文した。 もちろんお酒の提供はない。 この町にはスーパーがないので、恐らくお酒は購入できないだろう。 マラケシュで購入したビールを宿で飲む以外方法がないが、レストランから外の様子を見てると、とてお静かである。 酒の提供がないだけで、こんなに町が静かで心落ち着くようになるのかと思うと、酒のない旅もありだなと思えてくる。

食事をしながらユキオが突然に質問をしてきた。

「大ちゃんは100億円あったら何する? 昔、大ちゃんからその質問されたのを思い出した。 俺の回答は覚えているけど、大ちゃんのは覚えてないんだよね」

なかなか面白い質問をするものである。

「そうだね。100億円あったら皆が無料で住める町を作って学校作るかな。教育にお金をかける。新しい人達に本当の教育をしたい。食育とか含めて。」

実際に100億円というのは想像がつかない額であるし、100億で町が作れるかも分からないが、ここでの会話はある種のファンタジーもあり、実際には無限に使える金があるという事だろう。実現可能性とかは抜きにしての想像力を駆使したものである。

「ウルグアイの前大統領知ってる?ムヒカ大統領。世界一貧乏な大統領といわれている人なんだが、そんなに金があったら町を作ってムヒカ大統領みたいに皆から尊敬を集めれる人になりたいな。」

僕はユキオにそう回答すると、

「もしそうなったら、世界一貧乏な大統領だけど世界一子供がたくさんいる大統領になる可能性もあるね笑」

なるほど。そういう見方もあるのかと従兄弟ながら上手い返しに関心し二人で爆笑する。

僕たちのその会話は現実的に可能な会話ではないだろうがタガズートにいると、そんな空想的な金の使い方にもなんだか優しさが含まれる気がして2人の心が温まっていく感じがした。

帰り道、宿の前では2匹の野良犬が優しい目で僕たちを見つめていた。