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モロッコトリップ 2025【Vol.3 エッサウィラ~シディカウキ】

昨夜の屋上のテラスの長居が原因なのか、どうやら風邪をぶり返してしまったようだ。

もしかしたら乾燥した空気のせいなのかもしれないが、とにかく異常な咳き込みで目が覚めた。

ジャケットを引っ掛け、屋上のテラスに上がる。外はひんやりと冷たい。いや寒いという表現が的確だろう。

まだ眠ってる人間達とは違って、カモメ達は忙しそうに飛び回っている。

時刻はすでに8時半になろうとしているが、まだ街は眠っている。

僕達が滞在している港町でエッサウィラは海からすぐ近くなのに、全くと言っていいほど潮の香りがしない。

日本の海に比べて、南国の海は川の流れが緩やかで植物プランクトンの流入が少ないため、磯臭さが少ないと聞いた事があるが、それはこのモロッコにもあてはまるのかもしれない。

昨夜、屋上のテラスでくつろぎながら、次の目的地を探していた。

モロッコはフランスの植民地だった歴史がある為、フランス行きの飛行機は頻繁に出ている。

モロッコの次はボルドーに行く事までは決まっているのだが、それ以降はまだ決めていない。

これから約3週間以上の旅になるので、できる限り宿代は抑えたいという気持ちと、ローカルが住むリアルな居住空間が見たいという2つの側面から片っ端から友人に泊めて欲しいと連絡をしていた。

その連絡メールはフランスのパリに住む友人にも届いていた。

するとそのパリに住む友人から偶然にも、今日から僕たちのいる、エッサウィラで1週間のバケーションを取っていると返信があった。

パリでのアパートは他にも当てがあるので問題ないが、 その友人のルーツはモロッコにあると以前会った時に聞いていたのでモロッコについて色々と情報も得れる。

なんと偶然にもラッキーなタイミングであろう。

僕は空港まで迎えに行くことを申し出た。

空港に到着するのが午後の13時という事だったので、それまでサーフポイントを見て、波チェックに行く事にした。

12月のモロッコは大西洋(北極付近からの強烈なスウェル)からの波が入り、ビックウェーブになる日が多いという。 ただ僕達の滞在しているエッサウィラのビーチは南西向きで、そのウネリから避けるようになっており、サーフィンのビギナーであるユキオにはちょうど良いコンディションの波かもしれないと思い、まずエッサウィラのビーチに向かった。

今日の予報では北西からのうねり3~4mという事だが、エッサウィラのビーチは全くといって良い程波がなかった。

エッサウィラのビーチ沿いでは2軒あるサーフショップがちょうどOPENの準備をしていたので、波情報とレンタルボードの価格を聞く事にした。

最初に入った ショップの店員はアルバイトで、あまり英語が得意ではないような感じだった。

またサーフィンのことも詳しくは知らないようだ。

とりあえずレンタルボードの価格を聞くと1時間100ディルハム(10ユーロ)だった。日本円にして約1900円。これにウェットが付いてくるのでかなり良心的な価格である。

ただしボードはソフトボードがメインとなっている。

すぐ隣のショップもOPENの準備をしていたので、レンタルボードの価格を尋ねてみる。

牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけた店員にレンタルの料金を尋ねてみる。

掃除中だった彼は、一旦手を止めて口角に泡を含ませながら料金を教えてくれた。

料金は1軒目と同じく、1時間100ディルハムでウェットスーツ付きという事だ。つまりこの金額がモロッコで借りる場合の相場(指標)になろう。

先程のショップ店員とは違い、2軒目の彼は気さくな性格で、僕達に興味津々の様子だった。

僕が肩から下げているSONYのカメラを見るや否や、

「君はカメラマンなの?」 と聞いてきた。

「いやカメラマンではないけど、写真は好きなので色々と撮影しているよ」

「へー。君の写真見てみたいなー」

僕かカメラに入れてあるSDから何枚かの写真を見せてあげた。

「すごい良い写真だね!俺の写真も見てくれないか?」

そう言うと彼はおもむろに掃除道具を床に置き、携帯に入っている写真を僕たちに見せてきた。

「どうだ良い写真だろ?」

口角にたっぷりと泡を含ませながら自信たっぷりに見せてきたその写真は、ただ猫があくびしている写真だった。

僕たちはリアクションに困ったが、口角に溜まっている泡がこちらに飛んでこないかが心配で、

あまり彼を興奮させない方が良いと考え

「良い写真。君はとっても良いフォトグラファーになれるよ」

と声をかけてあげた。

彼は嬉しそうに2枚目の写真を見せようとしてきたので、話を逸らす為に、波について尋ねてみた。

牛乳瓶の底のようなメガネをかけた彼曰く、昨日まではすごく良い波だったようで、天気もよく海パンでサーフィンをしていたという事だった。 12月のモロッコの水温は低いというが、海パンでサーフィンできると聞いて僕達は少し安心した気分になった。

はっきり言って旅先でのサーフィンは水温によって大きく気分が変わってくる。

旅先で海パンでサーフィンができるというのは、例えると通訳をつけて海外旅行をするくらい、一気にサーフィンの敷居が低くなる感じである。

色々と情報を教えてくれた彼にお礼を伝え、良いフォトグラファーになるよともう一声添えて、僕達はショップを後にした。

正直このエッサウィラのビーチでは滞在中のサーフィンは厳しいと思い、エッサウィラから車で30分程南下したシディ・カウキというサーフポイントに向かう事にした。

そこはサーフショップと何軒かのレストランがある小さな村で、どこまでも続くビーチでは観光客を相手するラクダや馬がたくさんいた。

シディ・カウキは先程のポイントとは違い、波はあるようだ。

ただ波はあるものの、あまり良いコンディションとは言えなかった。

サーフショップの店員に聞くと、これから満潮に向かうのでそのタイミングで良い波に変わるだろうという事だった。 サーフキャンプしてるらしきフランス人に話聞くと、このポイントの奥に舗装されていない道路があって、そこにもポイントがあるらしい。ただしスタッグには注意するようにという事だった。目の前には屋島のような形の半島が突き出ており、おそらくその先端でサーフィンができるのだろう。

ポイントチェックに行ってみたい気持ちになったが、時計を見ると送迎の時間ギリギリになりそうだったので、僕たちは一度宿に戻り、朝食代わりに日本から持ってきた棒ラーメンを食べた。

汁物のないモロッコではこのラーメンが本当に美味しく感じる。

五臓六腑に染み渡るとはこういう時に使う表現なのだと痛感する。

僕達は宿をチェックアウトし、車に荷物を詰め込んで友人を迎えに行く為にエッサウィラ空港へ向かった。

だいぶ先に到着していたのだろう。友人は既に空港の外で待ってくれていた。

久しぶりの再会に喜びを分かち合う。

その友人はセルフィーナと言い、パリでスタイリストをしている。 これまでパリや日本でも一緒に食事をした。 昨年の夏に日本で会って以来の再会だ。

彼女の宿はエッサウィラの旧市街(メディナ)の中にある為、城壁の外まで送迎した。

マラケシュ同様に旧市街は道が狭くて車で入るのが不可能だ。

僕たちが予約した本日の宿も同様に旧市街の中にある為、後ほど一緒にランチに行く約束をして、其々の宿にチェックインに向う事にした。

メディナの城壁の外で駐車をしようとすると、係員がやってきて誘導をする。

そしてパーキング代とは別にチップを要求する。とにかくモロッコでは車を駐車しようとすると誘導役みたいなのが、どこからともなく現れてはチップを要求してくる。

車を停めてパーキング代とは別にチップを払い、スーツケースを押して宿までは歩いていく。

マラケシュのフナ市場とまではいかないが、エッサウィラの旧市街も凄い人である。

駐車場から歩いて10分程度進むと、旧市街の喧騒から外れてきた。

海沿いまで歩いて来ると本日の宿、Riad Kafila Essaouiraに到着した。

この宿の目の前は海という最高のロケーションである。

屋上のテラスでウェルカムティーをいただく。

ミントティーを頂き、僕たちはチェックインして部屋に入った。

先程の人混みを抜けてきたせいか、体調がどんどん悪くなり咳が止まらなくなってきた。

約束のランチの時間も迫ってきたので、日本から持ってきた咳止めを一錠飲み、待ち合わせのレストランに向かうことにした。

セルフィーナはすでに到着していて僕たちを待っていてくれた。

僕達は屋上の席に案内された。

モロッコはどこでもそうだが、とにかく猫がたくさんいる。

お店の席にも平気で猫がいる。猫嫌いにはなかなかの環境だろうが、この猫のおかげで街にはネズミが少ないのだろう。ネズミが増えれば感染症や病気も蔓延しやすくなるので、モロッコでは猫は守神みたいなものだろうか。

さてレストランは港町さながらのシーフードレストランだった。

セルフィーナが気を利かせてくれて評判の良いレストランを予約してくれていたのだ。

鶏肉のタジンに

モロッコサラダ、オレンジジュース、タイのグリル、スープを注文した。

それを全員でシェアして頂く。

このスープの名前は忘れたが、とにかく美味しかった。

食事をしながらモロッコのことについてセルフィーなが色々と教えてくれた。

その情報によると

・毎週金曜日にはクスクスを食べる日で安く食べる事ができる。

・アーモンドバターが美味い。

・エッサウィラから南に行くとタガズートという町がありヒッピーが沢山いる。

・タガズートではシバというお茶があり陶酔作用があるらしい。

その他にも色々と教えてくれたのだが、僕はタガズートのことで頭がいっぱいになっていた。

食事を終えてセルフィーナがメディナを案内してくれるということになった。

お会計は彼女は支払ってくれた。今度日本で食事をする時は是非にご馳走させてもらうと約束した。

メディナを案内してくれたのだが、どんどん体調が悪くなり咳が止まらなくなってしまった。

今夜外出するのは難しいだろうと思い、部屋で絵でも描こうと思い商店で鉛筆と鉛筆削り、そしてノートブックを購入して宿に戻る事にした。25DHだった。

メディナの城壁でセルフィーナに別れを告げて僕は宿に戻ることにした。

17時に宿に戻ったのだが、その後なぜか身体が動かなくなり、体調がみるみる悪化していく。 咳も止まらなくなり寒気も覚えてきた。これは流石にまずいと思いそのまま睡眠を取ることにした。

ユキオには申し訳ないが明日からの事を考えると今日は無理せずにしっかりと休養を取る事が先決だろう。

翌朝8時に目が覚めた。

実に深い眠りについていたようだ。 しっかりと睡眠をとったおかげか、体調は少し良くなっていた。

朝食は8時半という事だったので、その足で屋上のテラスに上がってみると実に素晴らしい景色が広がっていた。

朝食はモロッコのパン(ホブズをカットしたもの、クロワッサン、穴が開いたスポンジのようなバグリール、)に チーズ、はちみつ、ジャム、 コーヒー オレンジジュース ヨーグルトだった。

朝食をとりながら本日の行き先と宿について話をした。 エッサウィラも悪くはないのだが、もう少しコンパクトな町に行ってみたいと2人の意見が合致した。ここは少々都会すぎるのだ。

僕達は昨夜のタガズートの町に行ってみようという事で満場一致となった。

僕たちは早速タガズートの宿を予約した。

まだ少し咳が出るので咳止めを飲む。

朝食後に写真を撮りに街に出る。

街に出るとまた体調が悪化してきたので、チェックアウトまで少し仮眠をとることにした。

ユキオは1人でメディナを探索するらしい。

チェックアウト時間の11時まで仮眠を取り、目が覚めると幾分か気分はよくなっていた。

チェックアウトして幸雄と合流するためにパーキングに向かう。

宿から駐車場までポーターを使おうかと思ったが、聞いてみると40DH(700円)くらいだというので、自分でパーキングまで持っていく事にした。

幸雄を合流し、そのまま今朝行ったシディー・カウキというポイントに再度向かうことにした。

波は昨日より落ち着き良いコンディションに見えた。

昨日、同様ロータイドではなくハイタイドになってからの方がよいとショップの店員が教えてくれた。

体調が芳しくないのが主原因となり、サーフィンする気分ではないというのが正直な気持ちだった。

ただ昨日は僕の体調不良もあり、ユキオは少々、エッサウィラの滞在に対して十分に楽しめていない感じが伝わってきていたので、ユキオの気分をあげる為にもサーフィンをさせてあげたいと思っていた。

ユキオには俺に構わずにサーフィンして欲しいと伝えるも、初めてのポイントという事とまだサーフィン歴は浅いので心細いのだろう。僕と一緒に入りたいという事だった。

とりあえず、まだロータイドなので、僕はビーチ沿いを馬にでも乗って波チェックに行こうと提案した。

馬に乗りながら波を見ていたら、気分も上がり僕もサーフィンの気分になるかもしれない。そう考えた。

ユキオは初めての乗馬でとても楽しんでいた。

朝晩とは違い強烈な陽射しが僕達を襲う。馬なしでは永遠と続くこのビーチは歩けない。

乗馬も終わったが波はまだロータイドのままなので、とりあえずご飯食べる事にした。

僕達は近くのレストランに入る事にした。

まずモロッコサラダを注文♪

そしてパエリアを注文。

パエリアを食べながらのんびりと海を見る。

波もあんまり良くなっていなかった。

パエリアは4人前くらいの量があったので残りはテイクアウトさせてもらうことにした。

僕達は昨日のフランス人サーファーの言葉を思い出し、半島の奥先にあるポイントも見にいくことにした。

車で走ること30分。

途中まで舗装された道なのだが、そこを抜けると一気にオフロードとなり砂漠のような景色が広がる。

レンタカーは2WDなので少々心配な気持ちはあったが、対向車(サーファー)も普通の車で来ているので、平気だろうと思いそのまま進む事にした。

到着したポイントはまさに絶景という言葉にふさわしい場所だった。

サーファーズパラダイスという表現の方がピッタリかもしれない。

海に入るにはボードを担いでこの崖を降りていくらしい。

「こんな場所でサーフィンしたら最高だろうな。」

心では思いながら、正直体は全くサーフィンをしたい気分になっていなかった。

とりあえずポイントのチェックはできたので、サーフィンするにしてもボードをレンタルする必要がある。ボードはシディ・カウキという村まで戻らなければレンタルできない。

僕達はここまで来た道を戻り一旦、シディー・カウキに戻ることにした。

舗装されていない道をまた戻る。 砂埃が舞い上がりながら車を走らせる。

少し坂になっている場所があったので、止まってしまうとスタッグする可能性がある為、その手前で一気に加速して坂を乗り越える作戦に出た。

車が止まらないように慎重に進みながら坂の手前で加速するが、見事にタイヤが空回り進む事ができなくなってしまった。 僕達が心配していたスタッグである。

「しまったー」

ユキオが大きな声を出して悔しそうな表情を浮かべる。

周辺は誰もおらず、対向車も来る気配がない。

意外とこういう時は運転手より同乗者の方が冷静になるもので、

「まあいつか誰か来るだろうから休憩しながら待とう」

僕は悔しがるユキオにねぎらいの言葉をかけた。

いつか誰か来るだろうとは言え、それが何時になるか分からない。僕達はこの状況をどう脱するべきか考え何か使えそうな物がないかと探してみるも、砂以外ほとんど何もないのである。

朝まで誰もこないという事はないだろうが、最悪誰も来なければここで野宿するしかない。

車にはビール1ダースに先程のレストランで食べきれなかったパエリアの残り物がある。

一晩の野宿も悪くないね。なんて冗談を言い合っていると、

前方から車に乗ったサーファー2人組がやってきた。

僕たちの車が道路の真ん中を塞いでいるものだから、彼らもこれ以上先に進む事ができない。

「おーい。車をどけてくれないか?」

彼らが大きな声で言う。

「いや動かしたい気持ちが山々だが、スタッグして動けないんだ」

そう伝え、彼らの力を借りる事にしたのだが、車はびくともしなかった。

5分くらいは手伝ってくれただろうか。

彼らは僕たち車の横にある路肩みたいなスペースを見つけ車を停め出した。

「いい波が来てるんだ。悪いけど誰か他の人に助けてもらって!健闘を祈る!」

といってボードを抱えて行ってしまった。

まあ彼らの気持ちも分かるのだが、なんだかアッサリしているもんだ。

彼らもサーフィンが終わったらこの道に戻ってくるので、最悪その時にもう一度助けてもらおう。

ユキオは運転していた責任からか、必死に石を探してきてはタイヤの底に敷き、脱出を試みようとしていた。 僕は何とかなるだろうという気分と、ここでキャンプも悪くないという楽観的な気持ちもあってさほど焦ってはいなかった。

そうこうしていると次の車がやってきた。 次は3人組のサーファーで事情を説明して助けてくれることになった。 その中に1人地元の人間がいるようで、砂漠の走行になれている様子だった。車内にあるマットをタイヤの底にしき、空気圧を下げ一気にみんなで押せば脱出できるだろうという事だった。

僕たちは言われた通り、マットをタイヤの下に敷き、タイヤの空気を抜いた。

ユキオが運転し僕たち4人が後ろから車を押すと、見事に車は走り出しなんとか窮地を脱出する事に成功したのだった。

サーファー3人組に丁寧にお礼を伝え、そのままシディー・カウキに戻った。

町に着いたときには波のコンディションを良くなり海に入っているサーファーがどんどん増えていっていた。 ただ時間は17時を過ぎてしまい、日の入りまで後1時間程度となった。 サーフィンをするなら1時間弱しかないが、正直乗り気になれなかった。

しかし今日もずっとサーフィンを楽しみにしていたユキオをみると僕は申し訳ない気持ちと、体調不良を言い訳にサーフィンから逃げてる気がしてきて、少し嫌悪感に包まれた。

頭の中では、海に入ると体調が悪化しそうとネガティブな考えもあったが、サーファーを羨ましそうに見つめるユキオの姿を見ていると、 とにかく始まったばかりのモロッコの旅を楽しいものにする為には、このタイミングでユキオと一緒にサーフィンする事が大事だと思った。

体調が悪化したらそこでまた考えよう。

僕はユキオに

「海に入るぞ!」 と声をかけると

「おー!一緒に入るか!」

まさかこの時間になりサーフィンするとは思っていなかった様子で、少々驚きながらも二つ返事で返答してくれた。

心の通った者同士とはいえ、やはり旅の始まりは、お互いに気を使うものである。おまけに見知らぬ土地となればお互いの気持ちを同期させるのにも少々時間を有する。

その一言で僕たちはモロッコの旅を楽しむという思いが通じ合ったような気がした。

波情報を教えてくれたサーフショップは既にCLOSEしており、まだ開いているサーフショップに駆け込んだ。 なんせ日の入りまであと1時間だ。 波のコンディションに合わせたボードをピックして急いで着替える。 ウェットスーツは2mmと日本でいうと、初夏に着る薄めの物だったが、これを渡されるという事は水温もそこまで冷たくはないだろう。内心、水温の冷たさにビクビクしていたが、、

よし。大丈夫だろう。

ボードをピックして海に向かう。

二人ともウェットに着替え、ビーチで準備体操を始めた。

さあいよいよ入水。

しかし、足を海に入れてみると、驚くほどに冷たい。

僕の体調が悪いせいかもしれないが、いやこれは明らかに冷たい。このウェットの厚みは無理がある。

冬の瀬戸内海にTシャツで入るくらいの感覚だろうか。

このウェットスーツでは1時間も入っていられないかもしれない。

波の乗れる沖へとパドルして向かうが、波のサイズもあり、それ以上にかなりのパワフルな波だった。

10分くらいで波を待つポイントまで行けたが、もう既に僕の身体は冷え切っていて、サーフィンどころではなくなっていた。

大きい波がどんどん入ってくるが、体が硬直して波を上手く捕らえる事ができない。

30分くらい海に入っていただろうか、僕の身体は限界を向かえていた。

ユキオを見ると実に楽しそうにしていたので、僕は先に海から上がる事にした。

海から上がると一気に寒気がきて震えが止まらなくなってきた。 高熱が出る前に感じるあの寒気と同じ感覚である。

ボードを返却して服を着替えるが、寒気は収まらずトランクに入ってる服を着れるだけ着込んで、車の暖房を最大限にして車内でユキオを待つことにした。

僕が出て30分後くらいだろうか、夕陽が沈むかどうかのタイミングでユキオが海から上がってきた。 サウナみたいになっている車内の空気を察してかミントティーを買ってきてくれた。

ビーチではトゥベルという太鼓のようなモロッコの伝統楽器をもった若者が演奏をしていた。

沈む夕陽が空を真っ赤に染め、低音で響くトゥベルの音が波の波動と一致するようで心地よかった。

僕達は夕陽を横目に次の目的地であるタガズートに向けて夜の道を走りだした。

ユキオは凄く楽しそうな笑顔で今日のサーフィンについて話してくれたが、僕は寒気がひどくて、話半分であったが、楽しそうに話をするユキオを見てようやく僕達のモロッコの旅が始まったような気がした。