01 10 2026
ヨーロッパ トリップ 2025【Vol.1〜出発(アムステルダム)】
美しさを比喩する言葉は数多くあるが、 息をのむ美しさとはこの事だろう。
飛行機が着陸態勢に入ったと同時に、西の空に沈む太陽が水平線を黄金色に染めはじめた。

また同じくして太陽の180度反対側に満月が浮かび上がってくる。厳密に言うと満月は明日なのだが、満月と言ってよいほど綺麗な正円形を描いていた。
黄金色に染まった水平線と夕陽が映し出す満月、そして眼下に広がる層積雲。 その雲の切れ間には香港の街が見えてきた。 香港の街には灯りが点りだしている。

高松空港を出発した飛行機は定刻通り香港国際空港に到着した。
これからアムステルダムに向かい、最初の目的地であるモロッコに向かうのだが、ひょんなことから今回の旅が決まった。
昨年の9月にドイツ人の従兄弟ユキオが1年後に結婚するというおめでたい報告を持ってガールフレンドを連れて高松に帰ってきた。
以前のブログにも書いたが、ユキオとはこれまで色々と旅をしてきた。
Traditional Apartmentが始まったのも彼との旅がキッカケだったのは言うまでもない。
旅をしようと思えば、また行ける時が来るだろうが、彼もこれから家庭を作り大切にしていかなければならないので、これまでのような自由な気ままな旅は難しいだろう。
もちろん彼女にも了承を得る必要もあるが、このタイミングが最適だと判断して高松に来た際にユキオに独身最後の旅をもちかけたのだ。 年明けには二人の自宅をリフォームするというで、旅に出れるのは2025年12月までという事だった。
航空券を調べてみると、高松ー香港ーアムステルダムの往復航空券が15万円くらいで販売されていたので、すぐに往復の航空券を購入した。
Traditional Apartmentは今年がちょうど10年という区切りの年でもあるので、せっかくなら縁のあるヨーロッパ在住の友人達の元を訪ねてみたいという気持ちと色んな街をみて、街づくりを学び考え、そして今後の自分の進むべき道を探したい。そんな気持ちが重なり、12月のほぼ丸1ヶ月旅に出ようと決めた。もちろんドイツのクリスマスマーケットに行く事も動機の一つでもあるが。

香港の空港は少し蒸し暑かった。 アムステルダム行きの飛行機の離陸まで3時間超あるので、ラウンジに入り食事とシャワーを済ませる。フライトの準備は万端だ。

今回搭乗するキャセイパシフィック航空は初めての利用だが、機内食も美味しくて快適なフライトだった。 ただ11月にバンコクに行った際に風邪を引き、完治はしたものの咳だけが残る状態となり、機内の乾燥で少し咳が出るのが辛かったが。

アムステルダムには高松の自宅を出てほぼ24時間後、現地時間の早朝6時に到着した。

ユキオとの待ち合わせ時間はお昼の12時~12時半を予定しており、それまで6時間程度時間がある。 空港で時間を潰すのもアリだが、せっかくなのでアムステルダムの街へ繰り出そうと思い、 電車のチケットを購入しアムステルダム中央駅に向かう。 チケットを購入する前、現金は必要ないと思うが念のため空港のATMで引き出ししたのだが、500ユーロを引き出したところ11万円もかかっていた。円安もここまでくると国家ぐるみの詐欺ではないかと疑わざるを得ない。 とにかくスキポール空港での引き出しや両替はおすすめできない。

朝の8時半にアムステルダム中央駅へと到着したのだが、まだ太陽は上がっておらず、おまけに朝靄がかかっていて、街は幻想的な風景となっていた。気温は0度に近く、とにかく空気が冷たくて痛い。露出している肌に矢が突き刺さる感じといえば分かりやすいだろうか。


とりあえず街を歩いて散策する。街はまだ眠っているかのように静かだった。

10時頃になるとカフェや商店がOPENの準備をし始めだした。 ようやく街が起き始めたようである。 ちょうど小腹が空いてきたので、OPENしたばかりのパンケーキ屋に入る。 その店は中東系の夫婦で営んでいるようだった。
シンプルで一番オーソドックスなハムとチーズが入ったもの(メープルシロップをたっぷりとかけて食べるスタイル)とコーヒーを注文したのだが、17ユーロなので、円に換算すると3000円以上もするではないか。 旅の初っ端から円安の打撃をうける。
パンケーキが驚くほど美味しければ話も別なのだが、少々気持ちが滅入ってしまう。

パンケーキ屋を出る頃には11時になっていたので、その足で空港に戻る事にした。

街には観光客らしき人もチラホラ見え、コーヒーショップというマリファナが吸えるお店も軒並みOPENし、アムスの街はマリファナの匂いが漂いはじめていた。
電車を乗り30分もしないうちに空港に到着した。
荷物預かりサービスを利用していたので、荷物を取り待ち合わせ場所に向かう。

ユキオが住むドイツのオスナブリュックという街からアムステルダム空港までは車で約2時間半という距離なので、ユキオは空港までは車で向かっていた。空港の送迎エリアで駐車サービス(鍵を渡して車を預かってもらう)を利用する事もあり、ユキオが到着する時間に合わせて送迎ゲートで待ち合わせをする。

ほぼ電話で打ち合わせした時間通りに送迎ゲートに到着し、ユキオの車に日本から持ってきたお土産と、従甥姪に渡すクリスマスプレゼントを車に放り込んだ。

車を預けて外の空気から逃れるべく、空港内に入り僕たちは 日本から持ってきたおにぎりを食べながら3ヶ月ぶりの再会を祝った。
ちょうどここに来る2週間前に自然農法で作ったお米の収穫・乾燥が終わりお米を取りに行ってきた。
お米のことはこちらに書いてます→自然農法での米作り①
4月に籾から蒔いて発芽させて、1本1本抜きそれをまた田植えし、機械や農薬に頼らず、道具と自然の力だけで育ったお米である。 そのお米をオニギリにして持ってきたのだった。
オニギリを作って24時間経過していたが最高に美味しかった。 これまでのお米作りのエピソードをユキオに聞かせ、2人で感慨にふけていた。
腹ごしらえも終わったところで、マラケッシュ行きのフライトのチェックインに向かう。
スキポール空港はKLM(オランダ航空)の職員が受付業務を担っているのか、ほぼ全員がKLMの鮮やかな青色の制服を着用していた。 サンダーバードの制服を一段と明るくしたといえば分かりやすいだろうか。
預け入れ荷物は1人23kgとユキオから聞いていたが、預け入れの際に重量オーバーといわれた。 どうやら23kgではなく、20kgだったようで、僕の荷物(ほぼ友人に配るお土産)をユキオのスーツケースに入れてもらったのだが、 その分だけ重量がオーバーしたようである。
手荷物で持って行こうという事になり、ユキオがスーツケースを開けると なかにはトランプや卓球を一回り大きくしたようなラケットといった遊び道具がはいっていた。
遊び道具をここまで沢山準備してくれていたことに少し気分が高揚したが、同時にこのラケットみたいなものはどこで使うのかという疑問も湧いてきたのだが、とりあえずラケットは手で持っていくことになった。

手荷物検査を並んでる時に、これまでの旅を振り返りながら、若かりし頃の話になった。
ユキオは僕の事を大ちゃんと呼ぶのだが、
「大ちゃんは若い時と、今の自分とどう変わった?」
ユキオが質問する。
「そうだね。大きく変わった事といえば、心の感情かな。海で例えると10代〜20代の頃は荒れ狂った海だね(笑)。今は穏やかな瀬戸内海のように静かで、海底まで透き通っている海かな。若い時は怒りとか闘争的な大きなエネルギーが大きかった気がする。怒りも割と自分勝手な怒りが多かったかな。今では自分勝手な怒りはなく、理不尽な事や間違ってると思う事に対して、怒りを覚える事が多いし、そういった感情はあまり出てこなくなったかな。」
少し前の話だが、高松の夜の街を歩いている時、建物の片隅にある小さな神社に向かって若者が小便をしていた。 すぐに注意をしたのだが、そういった事に敏感になるのはオジサンになった証拠かもしれないな。
「かっこいいオジサンなら全然いいじゃない」
ラケットを肩からぶら下げたユキオが返答した。確かにラケットを持って手荷物検査に並びモロッコに向かうオジサンはかっこいいかもしれないな(笑)
手荷物検査は凄い行列でなかなか進まなかったので、ドイツの家族で過ごすクリスマスの話題に変えたところ、 「ディナー用にウサギを2匹買った」という事だった。
ドイツの家族のクリスマスはうさぎを食べるのが恒例であり、10年前に一度食べた時の美味しさが忘れられず、今回の僕のクリスマスの楽しみのひとつでもある。
ようやく手荷物検査を終えたのだが、ユキオはラケット入りの袋が再検査になった。 ラケットが不審に思われたのかとおもいきや、中にあったカードゲームがひっかかっていたようだった。 どうやらトランプに火薬を仕込むパターンもあるのだとか。 ここまでしっかりと検査してくれるのは安心だと思う反面、なかなか進まない原因もよくわかった。

搭乗口付近でビールとポテトを注文し、旅の出発そして良き旅になるように乾杯する。
モロッコではマラケッシュで1泊、エッサウィラという港町で1泊するところまで決まっているが、あとは完全にノープランである。
レンタカーを借りてベルベル人のように自由に気ままに行きたいところに向かうという事であるが、実際のところ二人とも忙しすぎて旅のプランを考える時間がなかったというのが正直なところでもある(笑)

これからどんな人達と出会い、どんな景色を見てどんな感情が生まれるのか。
大西洋に沈む夕陽が1秒毎に機内を赤く染めていく様子を見ながら考えていた。