ローマの休日

先日、東京出張に行ってた時の話。
 
《16:15分》
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空港で出発の飛行機を待っていると、機内設備トラブルルにつき出発が約30分遅延になるとのアナウンスが流れた。当初の予定時刻が30分遅れ19時10分に到着予定となった。僕はTUTAYAでレンタル期限がその日までのDVDを借りていたので、それを返しに行ければよかったので飛行機の遅延は特に気にしなかった。
 
《19:13分》
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飛行機は高松空港に到着した。 
僕は駐車場に停めてある車に乗りそのままTUTAYAに返却に行こうと考えながら飛行機から降りた。
 
《19:15分》
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1階の出口へ向かう途中にイタリア訛りの英語を話す中年女性に声をかけられた。
「私は今から直島に行きたいのですが、どのように行けばよいですか?」 
 
僕は仕事上、直島へのフェリーの時刻を把握しているので瞬時に答えた。
 
「あなたが乗ろうとしているのは19:50分のフェリーですよね?それなら諦めた方が良いです。だって今は19時15分です。今から預けている荷物を取って出口に出ると、早くても19時20分になります。 
空港からフェリー乗り場まではどんなに早くても35分は必要です。しかもこの時間は市内は混雑しているので、飛ばしても40分〜45分はかかります。つまり今からその船に乗るのは現実的にほぼ不可能です。」
 
女性は涙目になりながら僕に答えた。
「なんて事でしょう。。日本は新幹線も正確に到着するし、飛行機も遅延がないのかと思っていました。せっかくの予定が。。。今夜宿泊するところもありません。非常に困りました。。」
「もし今夜泊まる所がなかったり困った事があれば、ここに連絡ください。そこから市内行きのバスも出ていますから今夜中に高松市内に行くことをオススメしますよ。」 
僕は彼女に名刺を渡した。
 
 
「ありがとうございます。私達はわずかな望みがあるのなら、フェリー乗り場に向かいます。もし宜しければタクシーの運転手に行き先を日本語で伝えてもらえないでしょうか?」 
 
「もちろんいいですよ。」 
僕はそう伝えタクシー乗り場へ急いだ。
 
《19:20分》
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タクシー乗り場では1組待っていたが、この日は1台もタクシーがいなかった。そうこうしている内に女性が出てきた。女性はご主人とみられる男性と一緒だった。二人は僕がいるタクシー乗り場まで来た。
 
「奥さん。残念ですが、本日タクシーは1台も見当たりません。フェリーの出発時間まで残り30分です。恐らく本日直島に行くのは諦めた方が良いでしょう。」
僕はそう伝えた。
 
「そうですか、、。奇跡を信じていたのですが、、。」
夫婦は口を揃えて奇跡という言葉をつぶやいた。。
 
「奇跡、、奇跡、、、奇跡。。。」
奇跡という言葉が僕の頭の中を駆け巡った。
僕は3年前の出来事を思い出した。 
 
それは瀬戸内国際芸術祭で来ていたスウェーデン人カップルとの思い出だった。
 
【2013年3月】
僕はスウェーデン人カップルを豊島行のフェリー乗り場へと送迎するため車で高松港へ向かっていた。
前日、僕たち3人は居酒屋で食事をしながらお互いの母国について語り合った。
「日本人はとても親切で優しい。」
それが彼らの日本に対するイメージだった。
また、彼らは豊島に行くのをとても楽しみにしており、豊島に行き最終のフェリーで高松に戻り、そのまま新幹線で成田空港に向かい、母国に帰る予定だった。
つまり豊島に行くのが彼らの日本旅行における最後の締めくくりだった。
昨夜の事を思い出しながら車を運転するうち、フェリー乗り場に着いた。しかし船はまだ到着していない様子だった。もう少しで出発なのに、船が来ていないので少し不安を感じたが、もう少しでくるだろうと考えていた。
するとカップルの男性が銀行でお金を下ろしたいのでATMに連れて行って欲しいと言ってきた。
時計を見ると、出航時間まであと30分くらいあるので、十分間に合うと判断しATMに連れていく事にした。
最悪、船着場に戻るのがギリギリになっても大丈夫なように彼女には船乗り場の前で待っててもらう事にした。
僕たちはATMでお金を下ろして、彼女が待つフェリー乗り場に戻ってきた。
しかし、出航15分前になってもフェリー乗り場には船が停船していなかったので、さすがに変だなと感じた僕は係員に聞いてみた。
「豊島行きのフェリーなら隣の船着場から出るよ。あんちゃん達が待っていたのは別の島に行く船着場だよ。
ほらほら今、ちょうど出航しているのが豊島行きのフェリーだ。」
なんと!僕は乗り場を勘違いしていたのだった。。
しかも豊島行きのフェリーを見ると、船頭がアンカーを引きあげて出航しようとしていた。
「やばい!!」
僕はスウェーデンカップルに事情を説明して、正しいフェリー乗り場まで猛ダッシュした。
しかし残念ながら船はゆっくりと出航しだした。。
「Oh my God!!!」
二人は走りながら声をあげた。。
「待ってくださーい!!その船に乗ります!」
僕は大声で叫んだが、船頭さんには届かない様子であった。
船がゆっくりと桟橋を離れいく。
何としても僕は二人の最後の日本旅行の思い出に豊島に行かせたかったので、走りながら腹を括った。
僕はイチかバチか海にダイビングした。
ドボーン!!
という大きな音とともに
「誰か海に落ちたぞー!」
という声が船から聞こえた。
僕に気づいた船は僕を助けるため、ゆっくりと桟橋に戻ってきてくれた。
僕は船頭さんに引き上げられ、お詫びをしてスウェーデン人カップルを乗せて欲しいと伝えた。
特に怒られることもなく快く2人を乗せてくれた。
船に乗れた2人はとても驚いた様子で、出航する船の中から僕にピースマークを送ってくれた。
「It is the beginning of the miracle…」
後日、彼らからのレビューの見出しにはそう書かれていた。
「それは奇跡の始まりだった。Daisukeが船を引き戻してくれた。私たちは素敵な時間を日本で過ごす事ができた。本当にありがとう。」
訳するとこんな感じだったと思う。
それ以来、僕のところには多くの外国人旅行者が来てくれるようになった。
なんもない、どこにでもある普通の町に今では月間100名程度の外国人が来てくれている。
今思えばあれが奇跡の始まりだった。
【19時25分】
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僕は3年前の出来事を思い出しながら時計を見た。タイムリミットまで残り25分。
あの時の様に奇跡にかけるしかないと考えた僕は、二人に車で港まで送り届けると説明した。詳しい事を説明する時間はないので、とにかく急いで車に乗るように指示した。空港パーキングから車を出した僕たち一向は急いで高松港へと向かった。
僕は車の中で、19時50分のフェリーに乗るのは恐らく不可能である事を改めて伝えた。
通常なら45分の必要な距離なのに、僕たちに残された時間は25分しかないからだ。
しかし僕は何としても船に乗せてあげたい。そういう気持ちでいっぱいだった。
リュックベッソン監督の映画「TAXi」のダニエルの様に港へ向けてアクセルを踏んだ僕の車はどんどん前を走る車を追い抜いていった。
「ブラボー!!」
車を追い抜くたびイタリアの夫婦は後部座席でそう叫んでいた。
【19時40分】
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もう少しで市内に入る道路に近づいてきた。残り時間は10分。
しかしここから市内が渋滞していればその時点でTHE ENDである。
【19時42分】
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市内に入ると全くと言っていいほど、車が走っていなかった。
このまま走れば19時50分のフェリーに間に合う!!
奇跡が起こるかもしれない。
僕はさらにアクセルを踏んだ。
【19時48分】
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高松港が見えてきた。船着場には確かに本日最終の直島行のフェリーが停泊していた。
「間に合った!」
車の中で僕は二人にそう伝えた。
今回は3年前と違い、船乗り場も確認したし、船も間違いない。
もう海に飛び込むこともない。
「なんということだ!まさか船に乗れるとは。これはまさしく奇跡だ!」
夫婦はとても興奮した様子で僕に話しかけてきた。
「あなたはとても運転の技術がある。あなたはきっと良いF1ドライバーになれますよ。私が保証します。」
えっ!そこなの??
いやいや、俺もう歳だし、無理っしょ。しかもあんまり車に興味ないしさー。
そんな事より早く船に乗った方がいいよ。
「ありがとう。もしあなたがローマに来たら是非招待させてください。これは私の名刺です。それからこれは少ないかもしれませんが少しのお礼です。」
そう言った彼の手には5千円札が握られていた。
「ご主人。それを仕舞ってください。僕はそれを受け取るわけにはいけません。その代わりこの香川県での楽しかった思い出をあなたの友人に話しをしてください。香川の魅力を貴方の言葉で伝えてください。それで十分です。それからもしローマに行く時は町を案内してください。」
僕はそう伝え、船に乗った二人を見送った。
もうその時には頭の中にはTUTAYAのレンタルDVDの事はすっかり忘れていて、案の定、翌日に延滞料金と合わせてDVDを返却した。
僕は人生とは映画のようなものだと思っている。
僕の人生は僕自身が映画の主役であるが、この世の中には約60億人の映画(人生)がある。つまり、僕の人生というのは、ほとんどが他人の映画(人生)のエキストラなのである。
イタリア人夫婦の映画(人生)において僕は良きエキストラになれただろうか。
瀬戸内国際芸術祭がある年は奇跡が起こる。
久しぶりに「ローマの休日」でも見よう。
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